楡木満生先生を偲ぶ


 本学会の理事の楡木満生先生が2012年10月11日に虚血性心不全のために74歳で急逝されました。楡木先生は日本産業カウンセリング学会の会長として我が国の産業カウンセリングの発展に尽くして来られました。また我々の学会においても厳しい時期に会長代行を勤められ多大の貢献をされました。
 楡木先生は東京教育大学の理学部を御卒業後、米国ミシガン州立大学大学院で教育心理学の分野で修士号を取得されました。その後、自治医科大学で講師、助教授、教授をお勤めになり、平成9年にお茶の水女子大学教授、平成14年には立正大学に心理学部を創設され、心理学部長を長年お勤めになりました。
 本学会においても平成17年、立正大学での学術大会において大会長をされました。その大会の基調講演は、臨床心理学者として、今後の保健医療における臨床心理学や行動科学のあり方を指し示す素晴らしい内容でした。その内容は本学会誌Vol.21『健康と病の語り』で詳しく述べられていますので、ご一読ください。楡木先生は万人に愛される温厚なお人柄で、本学会の理事として重要な方でありました。
 楡木先生は我々の学会では重要な概念であるナラティヴをかなり早い時期から保健医療行動]科学に導入され精力的に研究されました。楡木先生の学術大会以降、何度もナラティヴ・アプローチが大会のテーマに選ばれるようになりました。現在ではすっかり本学会の方法論の一つとして定着しています。しかし、その方法論をどう育てていくのかについては、先生は残された我々学会員全員に託されたのだと思います。心して先生の御意志を継いでいかねばなりません。先生のご逝去を悼み、衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。

日本保健医療行動科学会 理事一同

<日本保健医療行動科学会雑誌第28巻第1号(2013年6月)より転載>